業種別のAI活用

士業・事務所のAI活用

顧問先からの質問、必要書類の案内と催促、面談の記録。少人数の士業事務所の連絡と書類の手間をAIで軽くします。

士業・事務所の現場で、よく聞く悩み

  • 顧問先からの電話で、作業が何度も止まる
  • 同じ内容の案内メールを、顧問先ごとに書き直している
  • 書類の不足確認と催促に追われる
  • 答えられるのが所長だけで、職員に任せられない
  • 顧問先の情報をAIに入れてよいのか分からない

士業・事務所のユースケース(1件)

この業種でよくある状況

税理士、社会保険労務士、行政書士の事務所には、所長ひとりか、数人の職員で回しているところが少なくありません。社労士を例にとると、全国社会保険労務士会連合会が2024年度に実態調査を行っています。事務所の従業員総数は「1人」が56.4%、「2人」が11.1%、「3人」が6.3%でした1。行政書士は、日本行政書士会連合会の組織概要によると、令和8年10月1日現在で行政書士会員が55,877人です2。

仕事は、顧問先からの日々の質問に答えることと、決まった手続きの書類を整えることの組み合わせです。入社や退社、許認可の申請、年末調整のように時期の決まった手続きが重なると、案内のメールと書類の確認、催促の連絡に追われます。同じ社労士の調査では、職業生活で感じる不安やストレスとして、「必要となる専門的知識の深さと広さ」が当てはまるとした割合が85.9%、「業務量の多さ」が60.8%でした1。

士業には、それぞれの法律で秘密を守る義務が定められています。税理士法、社会保険労務士法、行政書士法は、正当な理由なく業務で知り得た秘密を漏らすことを禁じ、資格者や開業者でなくなった後も同様としています345。資格者しかできない業務もあります。たとえば国税庁は、納税者の依頼を受けて行う税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士業務とされ、行えるのは税理士、税理士法人、国税局長に通知をした弁護士・弁護士法人に限られると説明しています6。AIを使うときも、この線引きが出発点になります。

AIで変えやすい仕事

  • 顧問先への回答・案内の下書き:事務所の回答例と必要書類の一覧をもとに、回答メールや案内文の下書きを作れます。くわしくは社労士・税理士事務所の顧問先への回答と書類の案内を、AIの下書きで軽くをご覧ください。
  • 必要書類の不足確認と催促文:届いた書類の一覧を手続きごとの表と照らし、不足の候補と催促の文面を出せます(見積・書類づくりの悩み)。
  • 面談・打ち合わせの記録:話した要点の音声メモから、決まった形式の記録に整えられます。
  • 事務所のお知らせ:制度の変更などを、顧問先向けのやさしい文章に直す下書きに使えます。内容の正しさは資格者が確かめます。
  • よくある質問の整理:電話でよく聞かれることをまとめ、案内文やホームページに載せる下書きを作れます(電話・問い合わせ対応の悩み)。

まだAIに任せにくい仕事

  • 専門の判断と、顧問先への最終的な回答:法令の当てはめや手続きの判断は資格者の仕事です。AIは改正を知らなかったり、もっともらしい間違いを書いたりします。TKC全国会の基本方針も、関与先の同意を得たうえで利用すること、出力結果の正確性を必ず確認し、最終判断は税理士が行うことを挙げています7。
  • 資格者にしかできない業務:税務相談のように資格者に限られた業務を、AIの答えで済ませることはできません。
  • 顧問先の情報の扱い:個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含む指示を生成AIに入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反する可能性があると注意を呼びかけています8。何をAIに入れてよいかは、事務所で先に決めます(AIを使うときの注意点のガイド)。
  • 顧問先との信頼関係:経営者の悩みを聞く面談や、言いにくいことを伝える場面は、資格者の顔が見えることに価値があります。

最初の一歩におすすめ

いちばん始めやすいのは必要書類の案内文の下書きです。入社・退社や許認可の申請など、手続きごとの案内は判断の要素が少なく、名前を伏せたままでも使えます。

その前に必ずやっておきたいのが、AIに入れてよい情報の線引きです。名前や番号は記号に置きかえる、入力内容が学習に使われない法人向けプランを使う、顧問先に使い方を説明する。税理士の世界では、日本税理士会連合会のデジタル・システム委員会が2026年9月に「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」(Ver1.0)を策定しています9。所属の会の指針も確かめながら、事務所の決まりにしていきましょう。

具体的な対応は、所属の会や所管の窓口、専門家にご確認ください。

参考にした資料

  1. 全国社会保険労務士会連合会 社会保険労務士総合研究機構「2024年度 社労士実態調査」調査結果(詳細版)(2024年11月) https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2024/202411_2024srchousa_shousai.pdf ↩ ↩2

  2. 日本行政書士会連合会「組織概要・沿革」 https://www.gyosei.or.jp/about/organization/outline ↩

  3. e-Gov法令検索「税理士法」(昭和二十六年法律第二百三十七号)第38条(秘密を守る義務) https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237 ↩

  4. e-Gov法令検索「社会保険労務士法」(昭和四十三年法律第八十九号)第21条(秘密を守る義務) https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC1000000089 ↩

  5. e-Gov法令検索「行政書士法」(昭和二十六年法律第四号)第12条(秘密を守る義務) https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004 ↩

  6. 国税庁「No.9204 にせ税理士にご注意」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9204.htm ↩

  7. TKC全国会「AIの活用に関する基本方針および会計事務所における必要な対応」(2026年6月3日) https://www.tkc.jp/news/2026/20260603/ ↩

  8. 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(別添1)」(2023年6月2日) https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf ↩

  9. 日本税理士会連合会「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドラインの策定について」(会員向けお知らせ、2026年9月30日) https://www.nichizeiren.or.jp/category/member/member_news/ ↩

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