業種別のAI活用

運送・物流のAI活用

日報の整理、荷主への連絡、ドライバーの求人。運行管理者と事務に集中する書きもの仕事をAIで減らします。

運送・物流の現場で、よく聞く悩み

  • ドライバーの求人を出しても応募が来ない
  • 手書きの運転日報を事務所で打ち直している
  • 遅れや荷待ちの連絡が電話頼みで、そのたびに手が止まる
  • 荷待ちの時間が長いのに、荷主に示せる記録がない
  • 運行管理者と配車担当に仕事が集中している

運送・物流のユースケース(2件)

この業種でよくある状況

国土交通省の資料では、トラック運送業(青ナンバー)の事業者数は62,559、中小企業率は99%とされています1。地方の運送会社では、社長や専務が運行管理者と配車を兼ねていることが少なくありません。日中はドライバーからの「遅れそう」「荷待ちです」という電話と荷主への連絡、夕方は戻ってきたドライバーの点呼と手書きの日報の整理。事務の仕事が、限られた数人に集中しがちです。

働き方の面では、同じ資料が、トラック運送事業の労働時間は全職業平均より約2割(400〜450時間)長く、年間賃金は全産業平均より5〜15%(20万〜60万円)低いとしています1。そこへ、トラックの運転者にも時間外労働の年960時間の上限規制が始まり、拘束時間などを定めた改善基準告示も改正・適用されました2。いわゆる「物流の2024年問題」です。全日本トラック協会が運送事業者に行った調査では、改正された改善基準告示について約7割が「守れている」、約3割が「守れていない基準がある」と答えています3。

人手も足りません。同じ調査で、必要なドライバー数を確保できているのは37.7%にとどまり、全体の6割超が「不足している」と答えました3。こうした変化の影響が「ある」と答えた事業者に悪い影響をたずねると(複数回答)、「運送コストが増加した」(46.8%)に次いで「ドライバーの採用が困難になった」(41.2%)が挙がっています3。

国土交通省の同じ資料は、具体的な対応を行わなかった場合、2024年度には輸送能力が約14%、2030年度には約34%不足する可能性があるとしています1。また、ドライバーの長時間労働の要因のひとつは、発着荷主の積卸し場所での長時間の荷待ち時間・荷役時間だとし、荷主企業と運送事業者が一体となって荷待ち時間の削減などに取り組むことが重要としています1。荷待ちを記録に残すことは、荷主と話し合う材料にもなります。

AIで変えやすい仕事

  • 運転日報の清書:ドライバーの音声メモや日報の写真から、いつもの書式の日報に整えます。くわしくは運送会社の日報の打ち直しと荷主への遅延連絡を、AIの下書きで減らすをご覧ください。
  • 荷主への連絡文の下書き:遅れや荷待ちの一報から、理由・到着の見込み・次の連絡時刻をそろえた文面を作り、配車担当が確かめて送ります(電話・問い合わせ対応の悩み)。
  • 荷待ち時間の一覧づくり:日報のデータから、荷主ごとの荷待ちの時間と理由をまとめます。国の手引きでは、待機時間を把握することで事務所から荷主に直接改善依頼ができるようになった会社の例が紹介されています4。
  • ドライバーの求人原稿:社長やベテランの話から、1日の流れや教え方まで書いた求人原稿を下書きします(求人原稿づくりにAIを使う方法)。

まだAIに任せにくい仕事

  • 点呼と運行管理:運送事業では、営業所に運行管理者を置き、運転者に対する業務前後の点呼や運行中の必要な指示をすることが求められています5。点呼の記録と運転日報(条文では「業務の記録」)は、運転者ごとに記録して1年間保存することが法令で決まっています6。AIは記録の下書きまでの係で、確定と保存は人が行います。機器を使った点呼の方法を考えるときは、運輸支局に確かめてから進めます。
  • 労働時間の基準を守れているかの判断:日報のデータを並べることはできても、改善基準告示に照らした判断は、運行管理者や社会保険労務士などの専門家が行います。
  • 配車の最終判断:当日の道路状況、ドライバーの体調、荷主ごとの細かな事情を組み合わせる判断は、経験のある配車担当に残ります。
  • 荷主との運賃や条件の話し合い:AIは記録をまとめる材料づくりまでです。話し合いは、顔の見える関係のなかで人が行います。

具体的な対応は、所管の運輸支局や専門家にご確認ください。

最初の一歩におすすめ

いちばん始めやすいのは運転日報の清書です。国の手引きのアンケートでも、デジタル化率が高くデジタル化の意向も強い工程として点呼業務や日報作成などが挙がり、自社だけで完結できる工程が目立ったとされています4。荷主の仕組みに合わせる必要がなく、いまの日報の書式とスマホがあれば、目安として2〜3ヶ月で形になります。

次は荷主への連絡文の型づくりです。よく連絡する荷主の数社から始めれば、費用はほとんどかかりません。

参考にした資料

  1. 国土交通省 中部運輸局 自動車交通部「物流2024年問題について」(2023年9月20日。事業者数・中小企業率は令和元年度、働き方の数字は令和4年までのデータ) https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ouensaito/chubukyoku.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  2. 厚生労働省 広報誌『厚生労働』2023年12月号(「来年4月1日」=2024年4月1日からの適用として案内) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202312_001.html ↩

  3. 公益社団法人全日本トラック協会「物流の2024年問題対応状況調査結果」(2025年3月公表、4月7日一部修正。運送事業者対象、調査期間2024年11月21日〜2025年1月15日、インターネット調査、2,973事業者が回答) https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2025/03/chosa20250331kekka.pdf ↩ ↩2 ↩3

  4. 国土交通省 総合政策局 物流政策課「中小物流事業者のための 物流業務のデジタル化の手引き」(2023年3月) https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001608991.pdf ↩ ↩2

  5. 国土交通省 物流・自動車局 安全政策課「自動車運送事業における運行管理の高度化に向けた 業務前自動点呼の先行実施要領」(2024年5月) https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000326785.pdf ↩

  6. e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第7条(点呼等)・第8条(業務の記録)(2026年11月2日時点の現行規定) https://laws.e-gov.go.jp/law/402M50000800022 ↩

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