AIを仕事に使ってみたい。でも、社内にくわしい人はいないし、何から手をつければいいか分からない。ITの会社に頼むと、大きな見積が出てきそうで不安になる。地方の中小企業の社長から、よく聞く声です。
この記事では、AIの活用を「外注する」場合と「伴走してもらう」場合のちがいを、費用の出方、社内に残るもの、向いている仕事の3つの面から整理します。外注のほうが向いている場面も正直に書きます。そのうえで、伴走で小さく形にする進め方と費用の目安、公的な相談窓口との使い分け、契約の前に確かめたいことをまとめました。
小さな会社ほど「最初の一歩」で止まっている
中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)は、2025年12月に、全国の中小企業の経営者・経営幹部1,000社へ、DX(デジタルを使った仕事の変革)についてのアンケートを行っています。
この調査では、DXに「既に取組んでいる」「取組みを検討している」企業の割合が、従業員101人以上では68.0%と高い一方、従業員20人以下では21.3%と低くなっています1。
取り組むうえでの課題は、「ITに関わる人材が足りない」が28.3%、「予算の確保が難しい」が26.0%、「DX推進に関わる人材が足りない」が25.6%の順で、いずれも前回調査を上回りました1。
従業員20人以下の会社に絞ると、「何から始めてよいかわからない」が18.7%から20.9%に、「ITに関わる人材が足りない」が18.5%から21.1%に、それぞれ前回調査から上がっています1。従業員21人以上では、「ITに関わる人材が足りない」が36.4%で、人材の不足がより大きな課題になっています1。
一方で、AIへの関心は高まっています。同じ調査で、DXに取り組んでいる(検討を含む)企業に具体的な取組み内容を聞くと、「AIの活用」が28.4%で、前回調査の14.3%から14.1ポイント上がりました1。
生成AI(文章などを作るAI)に限った調査もあります。帝国データバンクが2026年3月に行った調査(有効回答1万312社)では、生成AIを業務で「活用している」企業は全体の34.5%でした2。従業員数別では、「1,000人超」の63.6%に対して、「5人以下」は29.6%にとどまっています2。使い道として最も多かったのは「文章の作成・要約・校正」(45.1%)です2。
この2つは、調べた団体も時期も聞き方も違う調査なので、数字どうしを比べることはできません。ただ、どちらからも「小さな会社ほど、まだ始められていない」様子は読み取れます。人が足りないうえに、何から始めるかが決まらない。ここを外の力で補うときに、外注と伴走という2つの選び方があります。
外注と伴走は、何がちがうのか
ここでいう「外注」は、作ってほしいものを決めてITの会社に発注し、できあがった仕組みを納品してもらうやり方です。「伴走」は、外の担当者が会社に入り、社長や現場の人と一緒に、試しながら形にしていくやり方です。
| 外注(作ってもらう) | 伴走(一緒に作る) | |
|---|---|---|
| 最初に決めること | 何を作るか(仕様)を、発注の前に固める | 困っている業務を1つ選ぶ。中身は試しながら決める |
| 費用の出方 | 作るものの大きさで決まり、最初にまとまって出る | 月ごと・段階ごとに出る。途中で止めたり広げたりしやすい |
| 社内に残るもの | 納品された仕組み。直すときは、また発注することが多い | 仕組みに加えて、手順書・AIへの指示文・社内の「分かる人」 |
| 向いている仕事 | やることが決まっていて、量が多く、形が変わりにくい仕事 | やり方がまだ決まっていない仕事、現場ごとに例外が多い仕事 |
| 気をつけたいこと | 仕様があいまいなまま発注すると、できあがってから「思っていたのと違う」となりやすい | 会社側も時間を出す必要がある。任せきりでは進まない |
外注のほうが向いている場面もあります
すべてを伴走で進める必要はありません。次のような場面では、外注のほうが早く、安くすむこともあります。
- 何を作るかがはっきりしていて、途中で変わりにくいもの(決まった形式の帳票を自動で出す、予約フォームを作る など)
- 会計・給与・受発注など、会社の土台になる仕組みで、実績のある製品を入れたほうが安心なもの
- 写真の整理や書類の作成など、やり方の決まった作業をまとめて外に任せたいもの
最後の例では、国土交通省の事例集に、大阪市の建設会社が工事写真帳の作成業務を標準化し、1時間あたりの作業枚数が1.38倍(18枚→25枚)に増えたという例が載っています3。書類作成などを外部の支援チームに任せた取り組みの一部で、AIの導入例ではありません3。やり方が決まった作業なら、外に任せても効果が出ることを示す例です。
伴走が向いている場面
- 「AIで何ができるのか」から一緒に考えたい
- 見積・日報・問い合わせ対応など、会社ごとのやり方や例外が多い仕事に使いたい
- 作ったあとも、社内で直しながら使い続けたい
- 社内に、AIの使い方が分かる人を育てたい
AIの活用は、ここに当てはまることが多い分野です。AIは「何を入れて、どう指示し、出てきたものを誰が確かめるか」で結果が大きく変わります。作って納品したら終わり、ではなく、現場で使いながら直す期間が欠かせません。
伴走で小さく形にする進め方
このサイトの伴走者の場合の進め方の例です。期間は目安で、業務の量によって変わります。
| 段階 | 会社がやること | 伴走者がやること | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1. 無料相談 | 困っている仕事を話す | AIで減らせそうな仕事を一緒に整理する | 30分 |
| 2. AI活用診断 | 業務の流れと、使っている書類・道具を見せる | AIに向く仕事・向かない仕事を分け、優先順位・進め方・費用を提案書にまとめる | 2〜4週間 |
| 3. 試作 | 対象の業務を1つ決め、過去の書類などを用意する | 今の書式や道具(Excel、いつもの書類の形)を活かして仕組みを作る | 1〜2ヶ月 |
| 4. 現場で使って直す | 実際の仕事で使い、困ったことを伝える | AIへの指示文、確認のチェックリスト、入力してよい情報のルールを整える | 1〜3ヶ月 |
| 5. 引き継ぎ | 社内の担当者が、自分で直せるようになる | 手順書を作り、使い方を説明する | 2〜4週間 |
ポイントは、最初に取り組む業務を1つに絞ることです。件数が多く、今かかっている時間がはっきりしている仕事を選ぶと、効果が見えやすくなります。たとえば工務店なら見積書のたたき台づくり、FAXの注文が多い会社なら注文書の転記、介護の事業所なら話して残す記録などです。
1つの業務で「これは使える」と分かってから、次の業務に広げます。うまくいかなければ、試作の段階で止めることもできます。タイトルの「数百万円かけずに」は、最初から会社全体の大きな仕組みを作らず、こうして小さく確かめながら進める、という意味です。
費用の目安(例)
このサイトの伴走者の料金の例です(2026年11月時点)。実際の金額は、業務の量や範囲によって変わります。
| メニュー | 内容 | 料金の例 |
|---|---|---|
| 無料相談 | 30分。業務を聞いて、AIで減らせそうな仕事を整理 | 0円 |
| AI活用診断 | 業務の棚卸し、優先順位づけ、進め方と費用の提案書 | 5〜10万円 |
| スポット試作 | 1つの業務の仕組みづくり | 10〜50万円 |
| 伴走支援 | 試作→現場で使って直す→手順書・引き継ぎ | 月10〜30万円(3ヶ月〜) |
小さく始めるなら、まず診断で取り組む業務を決め、1つの業務の試作に進む形をおすすめしています。この例の料金なら、合わせて15〜60万円ほどになります。現場で使いながら直す期間も一緒に進めたい場合は、月ごとの伴走支援を選びます。
このほか、生成AIの法人向けプランなど、使うツールの利用料が人数分かかります。料金は各社の公式サイトで確認してください。補助金を使える場合もあるので、AI導入に使える補助金の考え方もあわせてご覧ください。
公的な窓口と、民間の伴走者の使い分け
AIの活用について相談できるのは、民間の会社だけではありません。
よろず支援拠点:中小企業・小規模事業者の経営上のあらゆる相談に応えるために、国が全国に設置した無料の経営相談所で、何度でも無料で相談できます4。2026年8月には、よろず支援拠点・生産性向上支援センターの令和8年度のAIアドバイザー登録者一覧表を公開しています5。拠点のページでは、毎年、相談者の9割以上から満足を得ていると説明しています(拠点自身による説明です)4。相談の予約のしかたなどは、最寄りの拠点の案内で確認してください。
IT導入支援事業者:デジタル化・AI導入補助金を使う場合は、IT導入支援事業者と会社が共同事業体となって、事務局に申請する仕組みです6。IT導入支援事業者は、中小企業・小規模事業者等にITツールを導入し、補助事業を円滑に進めるための支援を行う事業者で、事務局の審査を経て採択された者とされています6。補助金を使うなら、外注先の選び方がそのまま制度の手続きにつながります。
中小機構の同じ調査でも、DXの推進に向けて期待する支援策は「補助金・助成金」が43.9%で最も高くなっています1。公的な支援と民間の伴走は、どちらか一方ではなく、目的に合わせて組み合わせられます。
| 相談先 | 向いていること |
|---|---|
| 公的な窓口(よろず支援拠点など) | 無料で何度か相談しながら、何から始めるかを整理したい。ほかの支援策も知りたい |
| IT導入支援事業者 | 補助金を使って、登録されたITツールを入れたい |
| 民間の伴走者 | 決まった期間、同じ担当者に手を動かしてもらい、試作から現場での手直し、社内への引き継ぎまで進めたい |
民間の伴走者に頼む意味は、「一緒に手を動かす時間」を買えることです。相談で方向が見えても、実際に過去の書類を整理し、AIへの指示文を作り、現場で試して直す作業は、誰かがやらなければ進みません。社内にその時間と経験がないときに、伴走者がその部分を受け持ちます。ふだん付き合いのある商工会議所・商工会や金融機関に、相談先の紹介を頼んでみるのも一つの方法です。
失敗しないための確認ポイント
外注でも伴走でも、契約の前に次のことを確かめておくと、あとで困りにくくなります。
- 最初に取り組む業務が、1つに絞れているか。 「全社でAIを」ではなく、「見積のたたき台」「問い合わせの返信の下書き」くらいの大きさにします。
- 社内の担当者を1人決めたか。 外に任せきりにすると、終わったあとに誰も直せなくなります。
- 費用が「最初にかかる費用」と「毎月かかる費用」に分けて示されているか。 ツールの利用料は、支援が終わったあとも続きます。
- 試作の段階で止められる契約か。 途中でやめたときの扱いを、先に聞いておきます。
- 作ったものが会社に残るか。 AIへの指示文、手順書、整理したデータを、会社のフォルダに残せるか。特定の会社のツールの中にしか置けない形になっていないか。
- AIに入れてよい情報のルールを、最初に決める段取りがあるか。 決め方はAI導入で失敗しないための7つの決めごとにまとめています。
- 補助金を使うなら、契約や発注の前に条件を確かめたか。 順番を間違えると対象にならないことがあります。
- 相手が現場を見て、実際に使う人の話を聞くか。 社長の話だけで作ると、現場で使われにくくなります。
まとめ:まずは1つの業務から
調査を見るかぎり、小さな会社が止まっている理由として多いのは、人が足りないことと、何から始めればいいかが決まらないことです。最初から大きな仕組みを外注するより、1つの業務で試し、効果を確かめてから広げるほうが、出費も、うまくいかなかったときの痛手も小さくできます。外注が向く仕事は外注に、決まっていない仕事は伴走で、と使い分けるのが現実的です。
「うちの場合はどの業務から始めればいいか」を整理するところから、30分の無料相談でお手伝いします。何から始めればいいか分からない段階でもかまいません。
参考にした資料
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独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)アンケート調査報告書」(2026年2月。全国の中小企業経営者・経営幹部1,000社、Webアンケート、令和7年12月5日〜18日) https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202602_DX_report.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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株式会社帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260514-genai/ ↩ ↩2 ↩3
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国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工を確保するための基本的な指針(ICT指針)に関する事例集」事例No.2(2025年3月) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001851357.pdf ↩ ↩2
-
よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」(2026年11月2日確認) https://yorozu.smrj.go.jp/about/ ↩ ↩2
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よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)お知らせ(2026年8月28日) https://yorozu.smrj.go.jp/ ↩
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中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(中小企業基盤整備機構)「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」(2026年8月28日版) https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf ↩ ↩2