よくある現場の風景

午後2時半。ランチの最後のお客さまを見送って、店主はようやく賄いをかきこみます。夜の営業までのアイドルタイムは、夜の仕込みと、明日の魚の発注でほぼ埋まります。

スマホには、Googleマップから新しい口コミの通知。開くと星2つで「ランチで20分待たされた」。言い分はあるけれど、どう返せばいいか分からず、そのまま閉じます。その下には英語の口コミが3件。読めないまま、もう2ヶ月たちました。

インスタグラムの最後の投稿は、夏の冷やし中華の写真です。秋の新メニューを撮るつもりで、まだ撮れていません。Googleマップに出ている店の写真は開店したころのもので、定休日の変更も直し忘れています。

お客さまが店を探す入口は、スマホの地図と検索になってきました。ニュートラルワークスが2025年5月に550名に行ったインターネット調査があります1。店を探す手段は「Googleマップ」と「Google検索」が60.2%で同率トップでした1。Googleマップで情報が少ない店を見たとき、「行くのをやめる/他の店を探す」と答えた人も18.9%いました1。民間の調査ですが、写真や口コミの少なさが客足に響くことがうかがえます。

人を増やして発信の係を置ければよいのですが、それも簡単ではありません。帝国データバンクの2026年4月の調査では、「飲食店」で非正社員が不足している企業は59.1%でした2。

AIを入れると、こう変わる

アイドルタイムのうち15分を「発信の時間」と決めます。店主はスマホで新メニューの写真を撮り、話しかけます。「秋の新メニュー、さんまの塩焼き定食。今年のさんまは脂がのってます。大根おろしはたっぷり」。AIがこれを、Googleマップの投稿用とインスタグラム用の文章に整えます。店主は読んで直し、投稿するだけです。

口コミには、AIが返信の下書きを作ります。星5つの「また来ます」には、お礼と次の季節のおすすめを添えて。星2つの「待たされた」には、おわびと、混みにくい時間帯の案内を。店主は事実を確かめて、自分の言葉をひと言足してから返信します。英語の口コミは、AIが日本語に訳して中身を伝え、返信も英語で下書きします。

外国人のお客さまのために、メニューの英語の説明もAIで下書きします。食材やアレルギーの書き方は、店主が一品ずつ確かめます。

このモデルケースでは、週1〜2回の投稿と口コミへの返信が、合わせて週に30分〜1時間ほどで回るのが目安です。店の基本情報と「返信の決まりごと」を最初に作っておくことが条件です。

やってみると、こうなる

写真とひと言から、インスタとGoogleマップの投稿文を作る

入力は架空の例です。出力は、生成AIで実際に試した結果を短くしたものです(毎回少しずつ変わります)。

  1. AIに渡すもの

    写真の説明と、店主のひと言(メモ)

    写真:さんまの塩焼き定食。焼きたてに大根おろしたっぷり、すだち添え。ごはん・みそ汁・小鉢つき ひと言:「秋の新メニュー、さんまの塩焼き定食。今年のさんまは脂がのってます。大根おろしはたっぷり」 値段:1,280円(税込) 提供:10月1日から。昼の定食のみ。さんまが入った日だけで、なくなり次第終わり 店:城下町の和食店。昼は定食、夜は居酒屋。定休日は水曜

  2. AIが返してくるもの

    AIの下書きInstagram と Googleマップの投稿文

    【Instagram】 秋の新メニュー「さんまの塩焼き定食」がはじまりました。 今年のさんまは脂がのっています。焼きたてに大根おろしをたっぷり、すだちを添えて。ごはん・みそ汁・小鉢つきです。 1,280円(税込)。昼の定食でお出ししています。 さんまが入った日だけの提供で、なくなり次第終わりです。定休日は水曜です。 #さんまの塩焼き #秋の新メニュー #和食 #定食 #ランチ 【Googleの投稿】 秋の新メニュー「さんまの塩焼き定食」(1,280円・税込)を10月1日から始めました。今年のさんまは脂がのっています。焼きたてに大根おろしをたっぷり、すだち添えで。ごはん・みそ汁・小鉢つき。昼の定食のみで、さんまが入った日だけ、なくなり次第終わりです。ご来店の際のご感想を、よろしければ口コミでお聞かせください。

    投稿の前に確かめること:① その日にさんまが入ったか(入らない日に投稿が出ないように) ② 「今年のさんまは脂がのっています」が、その日のさんまにも当てはまるか

  3. 人が見て直すところ

    • 値段と「さんまが入った日だけ」の書き方が、店のメニューや黒板と合っているか確かめる
    • 店主の口ぐせや、いつもの言い回しを足して、店の調子に直す
    • 写真は、実際にお出しする料理のものを使う

自分で試してみる

ChatGPT・Claude・Gemini などに、下の指示文と例をそのまま貼りつけてください。無料版でも試せます。お客さまの名前や住所など、本物の情報は入れずに、この例のまま試してください。

AIへの頼み方(指示文)を見る
あなたは和食店の店主の、発信を手伝うアシスタントです。
次の「写真の説明と店主のひと言」から、Instagramの投稿文と、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出る店の情報)の投稿文を1つずつ作ってください。

条件:
・メモにあることだけを書く。値段・提供の期間・料理の中身は、メモのとおりに書く
・「地域一番」「最高級」「絶品」など、事実か確かめられない言葉は使わない
・Instagramは、ハッシュタグを5つまでにする
・Googleの投稿は150字ほどにし、結びに口コミをお願いする一文を入れる。ただし割引や1品サービスなどの見返りはつけず、星の数や書く内容も指定しない
・最後に、投稿の前に店主が確かめたほうがよいことを2つまで挙げる

――――― ここから例 ―――――
写真:さんまの塩焼き定食。焼きたてに大根おろしたっぷり、すだち添え。ごはん・みそ汁・小鉢つき
ひと言:「秋の新メニュー、さんまの塩焼き定食。今年のさんまは脂がのってます。大根おろしはたっぷり」
値段:1,280円(税込)
提供:10月1日から。昼の定食のみ。さんまが入った日だけで、なくなり次第終わり
店:城下町の和食店。昼は定食、夜は居酒屋。定休日は水曜

ここから先を、仕組みにする

試して手ごたえがあったら、毎日の仕事で回る形にします。ここが伴走でお手伝いする部分です。

  • 「店の言葉帳」(こだわり・口ぐせ・使わない言葉)を指示文に入れ、いつも店らしい調子で出す
  • スマホで写真を撮って話しかけるだけで、インスタとGoogleの下書きがそろう流れにする
  • Googleの予約投稿を使い、アイドルタイムにまとめて作った投稿を週1〜2回に分けて出す
  • 見返りなしで口コミをお願いする、QRコードのカードを用意する
この仕組みづくりを相談する →

仕組みを噛み砕くと

イメージとしては、店のことをよく知っている、文章の得意なアルバイトさんが、下書きだけを書いてくれるようなものです。投稿や返信のボタンを押すのは、いつも店主です。

仕事 入力 AIがやること 人が確認すること
投稿 写真と、話したひと言 Googleマップ用・SNS用の文章に整える 値段、提供期間、言い過ぎの言葉
口コミ返信 届いた口コミ お礼・おわびの下書き、外国語の翻訳 事実かどうか。低評価には自分の言葉を足す
外国語のメニュー 日本語のメニューと使っている食材 英語などの説明文の下書き 食材、アレルギー、宗教上の配慮

最初に作っておくのが、**「店の言葉帳」と「返信の決まりごと」**です。言葉帳には、看板メニューやこだわり、店主の口ぐせ、使わない言葉を書きます。決まりごとには、「お客さまの名前や来店日時を書かない」「言い訳から入らない」「体調や異物の話は店主が直接対応する」などを書きます。これをAIへの指示文に入れておくと、毎回同じ調子の下書きが出てきます。

発信の中心になるのは、Googleのビジネスプロフィール(Googleマップに出る店の情報を管理する画面)です。口コミに返信するには、ビジネスのオーナー確認が必要です3。返信の審査は通常10分以内ですが、最長で30日ほどかかる場合もあります3。投稿にはテキスト、写真、動画を含められ、公開する日時を決めて予約もできます4。アイドルタイムにまとめて作って予約しておけば、忙しい週も途切れません。

口コミの返信文案をAIで作るサービスの発表でも、同じ考え方がとられています。担当者が内容を確認・編集し「承認して返信」して初めて、Googleマップに反映される設計だと説明されています5。下書きはAI、出すのは人、という分担が基本です。

外国語のメニューは、自治体の支援サイトを使える地域もあります。たとえば千葉市の「千葉おもてなしSHOPガイド」では、日本語でメニューを入力すると14種類の言語に翻訳できると案内されています6。アレルギーや宗教などへ配慮したメニューも作れるとされています6。訪日客の側も、観光庁の令和5年度の補足調査で、困ったときに翻訳アプリなどのICTツールを使ったと答えた人が76%いました7。使った場面は「飲食店」が53%です7。

進め方の例(小さく始める)

ステップ1 店の情報と言葉帳を整える(1週目)

店にお願いするのは、1時間ほどの聞き取りと、Googleのビジネスプロフィールの管理画面に入れるようにしておくことです。オーナー確認が済んでいなければ、ここで一緒に進めます。伴走者は、営業時間・定休日・写真の古いところを洗い出し、聞き取りから「店の言葉帳」と「返信の決まりごと」の案を作ります。

ステップ2 たまった口コミに返信する(2週目)

返信していない口コミを、AIの下書きで片づけていきます。店主は1件ずつ読んで直し、返信します。店主が直したところを伴走者が見て、指示文を店主の言い回しに近づけます。

ステップ3 投稿を週1〜2回にする(3〜4週目)

アイドルタイムの15分を投稿の時間に決め、写真とひと言から下書きを作って出します。日替わり、季節のメニュー、仕入れた食材、臨時休業のお知らせなど、投稿のネタの一覧も作っておきます。予約投稿を使えば、定休日の前日に翌週分を入れておくこともできます。

ステップ4 外国語のメニューと口コミ(2ヶ月目以降)

よく出る10品ほどから、英語などの説明文を下書きします。食材とアレルギーは店主が確かめます。地域に自治体の支援サイトがあれば、あわせて使います。

制作会社に毎月の運用を頼むのではなく、店の中で続けられる形を作るのがねらいです。集客全体の考え方は集客・情報発信の悩みのページもご覧ください。

気をつけたいこと・AIに任せないこと

口コミを増やしたいときに、とくに気をつけたいのが「見返り」と「内容の指定」です。

  • 見返りをつけて口コミを頼まない。 Googleのヘルプでは、リンクやQRコードで口コミの投稿をお願いすることはできるとしています8。一方で、口コミの投稿などと引き換えに無料や割引で商品・サービスを提供することは「虚偽のエンゲージメント」と見なされ、固く禁じられています8。「口コミを書いてくれたら1品サービス」のような声かけはしません。
  • 星の数や書く内容を指定しない。 消費者庁は、令和5年10月1日からステルスマーケティング(広告であることを隠した広告)は景品表示法違反になると案内しています9。規制の対象は、店のように商品・サービスを供給する事業者(広告主)です9。消費者庁のQ&Aでは、口コミに「星5」を付けることを条件にする例を挙げています10。この場合は、事業者が投稿の内容を決めているため「事業者の表示」に当たると考えられるとしています10。割引程度の見返りで、投稿の内容を指示しない場合は、通常は「事業者の表示」に当たらないとも整理されています10。ただし、Googleの規約では見返りそのものが禁止です。どちらにしても、見返りはつけないと決めておきます。
  • 低評価の口コミに言い返さない。 Googleのヘルプには、口コミ投稿者の個人情報を公開したり、個人的に攻撃したりしないように書かれています8。お客さまは、返信を読んだあとでも口コミを変更できます3。冷静な返信は、次に店を探す人も読んでいます。
  • 言い過ぎの言葉を使わない。 景品表示法は、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示を禁じています11。AIは「地域一番」「最高級」のような言葉を書きがちなので、事実でない言葉は消します。写真も、実際にお出しする料理を使います。
  • 食材とアレルギーは人が確かめる。 AIの翻訳や説明は間違えることがあります。アレルギーや宗教上の配慮にかかわる表示は、店主が一品ずつ確認します。
  • 体調不良や異物の口コミは、AIの下書きで返さない。 店主が事実を確かめ、必要なら直接連絡をとります。

AIに入れてよい情報の決め方はAIを使うときの注意点にまとめています。表示や口コミの扱いで迷ったときの具体的な対応は、所管の窓口や専門家にご確認ください。

伴走者がお手伝いすること

  • Googleのビジネスプロフィールの見直しと、オーナー確認の手伝い
  • 「店の言葉帳」と「返信の決まりごと」づくり
  • 投稿・口コミ返信・外国語メニューの下書きを作る、AIへの指示文づくり
  • 見返りなしで口コミをお願いする方法(QRコードのカードなど)の確認
  • 使い始めてからの言い回しの調整

宿で口コミ返信にAIを使う例は旅館・ホテルの口コミ返信で紹介しています。飲食店でのほかの使い方は業種ページにまとめています。

参考にした資料

  1. Web担当者Forum(インプレス)「店選びは“Googleマップ”が主流? 写真やクチコミが少ない店はスルーされる時代に【ニュートラルワークス調べ】」(2025年6月5日) https://webtan.impress.co.jp/n/2025/06/05/49478 ↩ ↩2 ↩3

  2. 株式会社帝国データバンク「企業の50.6%が正社員不足 4年連続で半数超 7業種で正社員不足が6割以上 非正社員は「旅館・ホテル」が大幅改善」(PR TIMES、2026年5月19日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001341.000043465.html ↩

  3. Google「クチコミに返信する」(Google ビジネス プロフィール ヘルプ、2026年11月2日確認) https://support.google.com/business/answer/3474050?hl=ja ↩ ↩2 ↩3

  4. Google「ビジネス プロフィールの投稿を作成、管理する」(Google ビジネス プロフィール ヘルプ、2026年11月2日確認) https://support.google.com/business/answer/7342169?hl=ja ↩

  5. 株式会社Pignet「Googleマップのクチコミ返信をAIが作成!多店舗SaaS「Pignet Plus」が口コミAI自動返信機能を提供開始」(PR TIMES、2026年8月31日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000135897.html ↩

  6. 千葉市「千葉の滞在を楽しむウェブサイト『千葉おもてなしSHOPガイド』」(2026年11月2日確認) https://www.city.chiba.jp/keizainosei/keizai/promotion/chiba-omotenashiguide.html ↩ ↩2

  7. 観光庁「令和5年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果」(2024年6月) https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00004.html ↩ ↩2

  8. Google「クチコミを増やすためのヒント」(Google ビジネス プロフィール ヘルプ、2026年11月2日確認) https://support.google.com/business/answer/3474122?hl=ja ↩ ↩2 ↩3

  9. 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」(2026年11月2日確認) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/ ↩ ↩2

  10. 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」(2026年11月2日確認) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/ ↩ ↩2 ↩3

  11. 消費者庁「不当な表示の禁止(優良誤認・有利誤認など)」(2026年11月2日確認) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/ ↩